2017/06/02

家具職人  竹村さんのこと


彼は、「職人の鏡」と言える人だ。

ボクの建築人生にもとって大きな財産と言える人だ。

その仕事ぶりは、無駄が無く流麗で品がある。

道具も美しく、電動工具に至るまで20年以上のベテラン揃いだ。

それがすべて出来映えとして家具に現れている。

彼の家具が収まると、建築が一気にグレードアップする。

でもこれは、どんな建築にも通用する話ではない。

彼の家具は、ある意味リトマス試験紙だ。

収まった瞬間に造作の良し悪しが分かってしまう。

だから大工はいつも緊張する。
































彼と仕事をするようになって、多くの家具職人が彼の仕事を見学に来るようになった。





彼に初めて図面を渡したとき、彼が済まなそうにこうこ言った。

竹村さん「私は今までスライドレールとスライド蝶番を使ったことが無いんですよ。」

ボクは初め意味が分からなかった。

僕らの設計では、扉の調整がしやすくキャッチのいらないスライド蝶番が常識だし、

引き出しが軽く、箱の精度もそれほど必要のないスライドレールが当たり前だった。


竹村さん「扉も引き出しも全てインセットでお願いできないでしょうか。」

私 「???」「なぜスライド蝶番などを使わないのですか?」

竹村さん「壊れるから」

答えは簡単だった。

彼が考えている家具の寿命は、ボクが思っているよりもずっと永かった。

私「扉や引出しの面材と枠の目地は2mmほどで良いですか?」

竹村さん「単線で寸法を描かないでください。」

私 「????」

それが下の出来映え。





























でもこれでも、相当腕のいい職人なら出来なくはないかもしれない。

彼がすごいのは、上のキッチンの写真でも分かるように

自前の材料ではなく、ボクが支給した節だらけの材料。

去年竣工した桑名の家は栗材だった。

栗は最も狂いやすい材のひとつ。

それについて何か言うでも無く、何事も無く黙々と納めてしまう。

さぞかし梅雨時などは材が膨らんで

不具合が生じるだろうと思いきや

今まで納めた数軒に限っては、まだ一度もメンテナンスが必要になったことが無い。驚





螺旋階段の手摺も彼にお願いした。

薄い檜を何枚も重ね合わせ、それを現場で1本の手摺に仕上げてくれた。

多くの職人に彼の仕事と仕事ぶりを見てほしい。








































初めて彼が作ったキッチンの引出しを引いた時の感動は今でも忘れない。

木と木が優しく擦れる感触が手にまで伝わってくる。

その優しい感触は、そのままこれを作った人の優しさだと思った。

僕らの仕事の真価は、まさしくこれだと思った。

決してネットや写真では伝わらないリアルな体験だ。

ボクはその時、彼から建築家として大切なものを教わった。









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