2016/05/17

ぜんぶ手でつくる 36







人工知能と建築の仕事と教育








この間のNHKスペシャルは面白かった。全体的には人工知能の今を紹介する番組ではあったが、近未来を想像するに充分な内要だった。

見終わった後の心境はかなり複雑だった。多分それは未来に対する希望と失望が入り混じっていたからだ。少し前までは人間に残された唯一の砦は「創造力」だと信じたい気持ちがあった。でも、それも空しい妄想だった。

新種の手を自在に打つアルファ碁を見て背筋が寒くなった。20世紀の初頭、コルビジェとミースの出現によって建築はレジュームチェンジした。しかし、残念ながら次のレジュームチェンジは人間ではなさそうだ。それもそう遠くない未来に。

実際に今個人の建築事務所が選ばれる理由にデザイン、機能、コストパフォーマンス、信頼性などがある。しかし、これらの価値も風前の灯だ。我々の仕事の多くが人工知能に取って代わるだろう。我々建築士は条件を入力し、出てきた案を選択し、精査するだけの仕事なる。条件の入力と選択することしか個性を発揮するところはない。それで社会は我々を必要とするだろうか?。コンプライアンスはもちろんのこと、施工図、正確な見積まで出てきてしまえば、我々に残る仕事は現場監理くらいだ。それも大企業が本気になれば風無くなってしまう。残るは義理人情で食いつなぐか?.笑い話にもならない。

かたや、トップアーキテクトがしのぎを削るコンペも怪しい。優秀な学生を引抜きコンペに挑む。そのスタイルももうそう長くはない。プログラムを入力する数人のスタッフがいれば、人工知能ははるかに斬新で合理的、新奇性に富んだ案を出す。おまけに審査員の傾向と対策まで盛り込んだプレゼが出来上がる。裏を返せば、小さな個人事務所や学生でも大きなコンペを勝ち取るチャンスが出てくる。


一方、心配なのは大学の建築教育だ。今までも多くの学生が生涯ほとんど経験することのない大規模な公共施設の設計をさせられてきた。そして、なんだか本人も実感の湧かないコンセプトとプレゼンテーションの卓越さが評価される。何度でもいうが、コンセプトとプレゼンテーションはクライアント不在か信頼関係が希薄なほど重要度を増す。人工知能が多くの仕事を奪っていく近い将来、ほとんどの学生は人と人との繋がりでしか生きていく術がない。コンセプトとプレゼンテーションは人工知能の仕事だ。講評会など無駄な授業は一刻も早く止めて、信頼される人間力の種が芽生える教育を始めるべきだ。

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