2016/05/09

ぜんぶ手でつくる  34






契約のタイミング 




ボクは、実施設計まで設計契約をしない。期本設計は施主にとっても一番楽しい時期。契約をすることでお互いの関係に責任と義務が加わる。出来れば基本設計は「遊び」にしたい。その方が面白いものができる。


もうひとつは基本設計をお見合いの期間としている。いわゆる信頼関係を築く期間。自由な関係、立場を維持することで、よりいっそうお互いの理解を深められる。


ハッキリいうとボクの仕事は信頼関係が全て。それがなければ、さじ加減をしてしまったり自分の才能や実力を全て出し切れない。最善と思うものを提案できない。そういう仕事は絶対にしたくない。最善と思えない仕事ほど苦痛なものはない。そういう仕事をスタッフにも職人にもさせたくない。


何よりも最も不幸なのは、そんな建築にローンを払い続け一生面倒を見ていかなければならないクライアントだ。ボクはそんな仕事をするためにこの仕事を選んだんじゃない。


自分がベストと思えるものを提案し、それを請負い自分で作る。それによって生涯晴れがましい気持ちで責任を持って建築ともクライアントとも付き合っていける。それを実現させるためには急がば回れ。契約は環境が整ってから。


過去には基本設計の段階でキャンセルになったこともある。もちろんタダ働きだ。クライアントも時間を無駄にする。でも、結果としてそれで良いと思う。建ててしまえば取り返しがつかない。


自分が設計すれば全ての人が幸せになるわけではない。むしろその方が少ない。建築家には専門家として冷静に判断できる信念と品性が不可欠だ。



ただ最近、以前のクライアントから「この時期ボクが本当に仕事をする気があるのかどうかがとても不安だった。」と言われた。それはボクも同じ気持ちだ。でも、生涯付き合っていこうという覚悟を持つには、お互いにこういう時間は必要だと思う。




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