2015/08/10

藤本壮介講演会


昨日、長久手の淑徳大学で行なわた建築家藤本壮介の講演会に行って来ました。

彼は今、世界で最も期待されている日本人建築家です。

聴講者はほとんどが学生で

平均年齢を上げているのは、

ほんの少し教授と思われる人と私のような建築関係者でした。

意外だったのは同業者の少なかったことです。




率直な感想は話が大変分かりやすかったことと、

彼の誠実な人柄のおかげでしょうか大変心地よい気分で帰路につけたことです。




難しい理論はほとんどありませんでした。

そして、設計を始める初期のイメージは

誰でもが思いつきそうなシンプルなものでした。

実はそこからが彼の非凡なところです。

いくらコンセプトやイメージが優れていても

普通は建築という現実の前に妥協を繰り返し、

結果はかなり残念なものになってしまうものです。


しかし、イメージの豊かさと実現に向けての手法の多彩さで

それを克服しているような気がします。

それは彼自身の粘り強さはもちろんですが、

周りのスタッフの優秀さを抜きにしては考えられないでしょう。



私は彼の建築をそれほど見ていませんが、

私個人が残念に思うのはディティールの甘さです。

私は建築の時間軸を支えるのはディティールだと思っています。

しかし、彼は違うようです。


彼は建築全体のイメージを大切にし、

それを崩さないものであればディティールや素材にはこだわりはないように思いました。

実際、白という色についての質問を受けた時にも

塗り直すことに全く抵抗は無いようで

素材自身についての言及もありませんでした。


彼にとっての建築というのは、

時とともに味わいを増していくものというよりは

その瞬間瞬間の体験が大切なのだと感じました。

私には何か建築というよりも「装置」に近いと感じました。

彼独特のファンタジーの世界から生まれる

イメージからできたアトラクションのようです。

それが機能的で楽しいものであれば、それはまぎれもなく建築なのでしょう。



現に彼はハイゼンベルクの不確定性原理の話をし、

もの(素材)の実存について懐疑的な思考の一端を話してくれました。



それは建築を実存するものとして捉え、

人の営みの中から情緒を育もうとする私の建築と

建築をイメージと捉え体験を大切にする彼の建築とでは

その立ち位置は全く異なっています。



おそらく彼の建築は出来た瞬間に完成しているのでしょう。

また、経年変化したとしてもいつでもリニューアル出来きます。


しかし、私には完成型のイメージがありません。

いつが完成かも分かりません。

このことが私の建築の最大の長所でもあり短所でもあります。



私はこのことにいつも悩まされています。

それは完成型のイメージを共有することが難しいからです。

私の建築をパースで表現しても

実に単純で物足りなくどこか既視感のあるものになってしまいます。

私が建築をパースや写真で表現することに抵抗があるのはこのためです。

この壁を乗り越える手段はおそらくありません

だからコンペなどが私の主戦場になることは今後もないと思います。


かたや彼はパースなどでかなり正確にイメージの共有が出来きます。

実際に彼のパースを見ると実にワクワクします。

それは素材や時間をそれに入れる必要がないからでしょう。

彼の建築の最大の長所でもあります。



また、今回彼の講演を聴いて改めて自分の立ち位置を確認でき、

今後も与えられた仕事を命懸けでやるしかないことを再認した聴講になりました。



また、彼の素晴らしい人柄、プロジェクトやその作られ方の分かりやすさを垣間見れて

やはり彼はなるべくして世界的な建築家になったのだと思いました。
































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